社長の口から、出た言葉を再考してみた。たまたま将来マーチャンダイザーになりたい店長が、もっと本部で仕事をしたいと話をしたときのことだ。MDになりたいのですか?では今それに向けて何かしていますか?という切り替えしだった。ほとんどの切り替えしがこのパターンである。一人前(世界水準)のMDになるには、必死に勉強して自社の中で100人に2~3名、世界のステージではその中の1%ぐらいしか一流にはなれないという意見だ。しかもその水準というか、自社の中での2~3名という枠に入るには「才能」が必要だと言う。自分の才能を理解するのも重要な資質であり、この場合の才能とは、卓越した感受性と論理性の共存である。大抵の場合は、感受性や感覚が鋭い人は、論理性に欠け、論理性で武装した人は感覚的なところが劣るという経験知からの意見でした。つまり何かをしたい、このような仕事をやってゆきたいと思ったときに既に何かを実行に移して努力していなければ、既にそのレースに敗退していることを意味する。そして社内で一流のMDとは、●●さんのようなひとですか?という質問に微妙な間があったということは、社内に一流は存在していないというのが現状のようだ。それはやはり業績に現れているのかもしれない。物作りのエキスパートがいるのなら必然的に売れてなんぼだ。但し必死に努力して勉強して10年やれば可能性は高まる。今ステージにあがっている人の中で突出する可能性はまだ存在しているが、そのステージにあがろうとしているなら誰よりも努力をしないとステージ上でも苦い思いだけをすることになり、自己を見失いかねない。店長職とて同じことだ。国内だけで考えてみると例えば出店店舗が1000店舗なら1000席しか店長というポジションは存在しない。もし毎年500名新卒が採用されるとしたら、それは厳しい争いになる。現在の日本の場合、出店が飽和状態になれば、席は増えるどころか減ることすら考えられる。何よりも10年ルールの中で既にステージ上で戦っている店長と素人が席の奪いをするという現実を直視しなければならない。隣の同期がライバルどころか全員が束になって戦わないとステージにあがることすら困難である。悩んでいる暇など1秒たりともないのだ。更に言えば、グローバル企業の場合、席は海外にも存在する。もし国内の席争いが苛烈を極め生き残る為の手段として考えるのなら外へ出ることだ。外へはまだ出店拡大というパイも残されている。つまり席は増加傾向だ。そこで戦うための準備をすることが大前提となるが、精神的なタフさや、ハングリー精神などこれも資質に依存することが大きいかと思える。話を少しそらすが、最近良く耳にするのが、「頭の良し悪し」である。頭の良し悪しで人を判断する人が会社という組織には多いようだ。「頭の良し悪し」が知恵や賢明さを指していれば救えるが、知識を誤って判断基準にしているのが現状のようで、それは大きな間違いである。確かに知っているということはいいことで、ひとつの強みであるが、これは努力でいかようにもできることである。頭が良い人が率いた会社がいくらでも倒産する。頭が良い人が犯罪を引き起こすこともしばしば。頭の良し悪しで人を判断すること、それを口に出すこと自体がナンセンスである。人は姿勢で見るものだ。どう向き合うか、向き合っているか、志があるか、それにつきる。表面的なスキルはいくらでも身につけることができる、不動のスタンスは潜在能力を抜群に引き出す鍵なのである。ポテンシャルの有無も頭の良し悪し同様、語られることが多いが、スタンスを磨き上げることで実は眠っている潜在能力を引き出す可能性は大いに高まる。実際自分の潜在能力を最大限引き出せている人の方が少ない世の中でポテンシャルの高低を話しても意味はないと思う。実は見えていないだけということが多いのではないのか。話を元に戻そう、店長職についても、そのような争奪戦の中で自分に才能があるのかないのかは早い段階で判断しないといけない。才能の有無に気付くためには、努力や勉強を必死でやる必要がある。そうでないと気付けないはずだ。怠けていてできないのは当然、必死にやっても駄目だった、再度挑戦して納得がいくまでやってみて駄目だったら才能の有無に気付けるはずである。人間は頼るものがある内は甘えが生じる。自分以外に誰も頼れるものがない状況下で、生き延びる強さや本来備えている能力というのは発揮される。そこにはハングリー精神や志が存在する。そうしてはじめて頼れるもののありがたみや、大切さを再認識するのである。グローバル企業が魅力的だとか、国際的に活躍できることが志望動機で入社して国内志望とか、世界で活躍したいと言いながらニュースも知らないとか、そういった矛盾を抱えている社員は即刻、スタンスを改めるべきである。店長職とはそんな適当な人間ができるほど甘い仕事ではないし、一生その席につくことはできない。そして店長職を極めようと思えば1%に食い込む努力を惜しみなくするとともに10年ルールなんていう馬鹿げた固定概念を覆す必要がある。先人の失敗を自分の経験として吸収できる土台とインターネットという武器を有している我々が90年代のエキスパート達と対等にやりあうのに10年も必要はない。GEのジャックウェルチが絶賛したリーダーがおり、自分が知らないIT分野のことは、そのことを精通している若手の部下をリーダーにして仕事をしたという事があった。そのような賢明なエキスパート以外は間違いなく2005年以降、頭角を現し始める次世代の店長達が淘汰してゆくだろう。