福岡伸一さん著書、フェルメール、光の王国。そもそも私は美術とか絵画の世界とは無縁な人生を歩んでいるが、ふと書店で目に留まってページをペラペラとめくったことがきっかけで購入した一冊だ。フェルメールが誰なのかすら知らない。ただアインシュタインの名前が文章に飛び込んできたことで、一体どんな内容なのか気になったのでレジまで運んでしまった。最近は、美意識がないという上司からのフィードバックを真摯に受け止め、そもそも美しいとはどのようなことなのか、随分と考えていたので、万人が美しいと認めるような芸術の世界の特にポピュラーな絵画だということで、読んでみようというモチベーションは比較的高かった。なんとも奇遇なことに、全く接点がなかったと思っていたフェルメールといかに自分がニアピンで足跡を残していたのかがわかり、今思えば非常に勿体無いことをしたと反省している。アイルランド、スコットランド、オランダ、ドイツ、ニューヨーク、パリとフェルメールの作品を管理している美術館があるところを殆ど訪れていたのに、その存在を知らないということで、素通りをしているような状況。著者は4年を費やしてフェルメールを尋ねる旅をするほどの貴重な機会としており、本著を執筆している。無知は損だ。何よりもこの本をきっかけにして、随分と絵についての知識や楽しみ方を教わった。残念ながら美とは何か、というようなポイントからははずれてしまったが、フェルメールが光の粒を絵に封じ込めながら、次の時間の動きをたくみに表現できる、著者の表現するところの微分を見事にやってのけた画家として私の記憶に鮮明に刻み込まれた。いつか機会があったら、フェルメールの作品を直接見てみたい。
2011/10/26
フェルメール 光の王国
ラベル: 話題