祖父が致命傷を負った大地に足を踏み入れていることは、自分にとって感慨深い。日本を離れシンガポールに赴任する際に伯父がつぶやいた。「おじいちゃんが参画していた作戦の場所だね」陸軍中野学校を出て情報将校となった祖父は、同じ場所、違う時代に存在していた。手元には祖母が1985年に2001年に向けて書き留められた手紙がある。2012年の年の瀬、更に時代は流れた。既にアルツハイマーでまともに会話すらできなくなった祖母だが、有難い事に存命である。あの日、ソファに腰を掛けて笑顔でこちらをじっと見つめていてくれた、その眼差しの奥に幾つもの時代が鮮明に映し出されているようだった。この手紙には、厳しい時代を生き抜いてきた愛する祖母の真心が込められている。人間はある種の宿命を背負うことを決められているようだと、物思いにふけりながら手紙を見つめている。
2012/12/29
The letter from my grandma 1985
ラベル: 話題