2010/08/13

民の見えざる手 デフレ不況時代の新・国富論


社長推薦図書「民の見えざる手 デフレ不況時代の新・国富論」大前研一さん著書、個人的に大前研一さんの著書は好きなのでほとんどは読んでいるが、今回は社長推薦図書ということで早速店舗の下にある書店に足を運んだ。新著が出ていたのは知っていたが、購入していなかったので、良い機会となった。読了して、書こうと思えばいくらでも書けるのだが、2つだけ第2章から抜き出して自分なりに考えてみた。

1つ目は安売りに関して、本著では触れていないが、考える上で好例だと思ったのが「牛丼戦争」だ。吉野家の業績不振は、安売り合戦に参加し遅れたことが大きいと書かれていることが多い、これが明暗を分けたと声高に叫ばれているが、本当にそうだろうか、また自分が吉野家の経営者ならどのように対応してゆくだろうか。ポイントは「早い、安い、旨い」だろう。なぜ吉野家は苦戦するのか、顧客は吉野家に何を求めているのか考えると、この「早い、安い、旨い」というコンセプト自体は決して現在でも色あせてはいない。但し「早い、安い、旨い」のうち、早いでは競合他社と比較しても大差はなくなっているように感じるのは自分が顧客の立場から考えても、意識したことがないぐらい差はないと言っていいだろう。では旨さはどうか、こちらもメニュこそ差はあるが、実際目の前に吉野家があってもすき家でしか食べたくないほど、味が悪いかと言うと、こちらも大差ないのではないかと思う。ではどこで人々は差を感じているのかというと、安い。つまりどのぐらい安いかが牛丼戦争の主戦場となっているわけだ。だから経営者としてはやむを得ず、この戦いに参加し、お互いが利益を削りながらの消耗戦を繰り広げざるを得ない。では自分が経営者なら、どうするのか切り口を考えた。

吉野家牛丼戦争での主戦場「早い、安い、旨い」の呪縛からの開放について

①高付加価値は牛丼につけられないのか
   -少し足せば、凄く美味しい牛丼
   -健康促進、美容などの効果

②どのような顧客が利用しているのか、したいと思っているのか
   -今でこそ女性を見かけるが、実はもっと利用したいはず
   -家族連れで過ごせる空間なのか

③そもそも吉野家は何を求められているのか
   -家計の味方
   -手作り弁当のような温かい食事

④日本のマーケットに固執する必要があるのか
   -海外では吉野家の出店の方が明らかに進んでいる
   -3倍の規模になるまでの期間を短縮できないか
   (海外414店舗、米国100店舗出店加速、国内1183店舗)

このようにして切ってゆくと主戦場を選び間違えにくいのではないだろうか。

もう1つはユニクロの母体FRグループが展開する「ジーユー」ブランドについて、大前研一さんが、ユニクロ1本にしぼるべきだと述べられているが、990円ジーンズはブランドの認知度を高めたという点については成果であったと私は感じている。ブランドのポジショニングについては賛否両論あるだろうが、例えば最近ではソーシャルビジネスに本格的に取り組んでいる同社にとっては1日当り2ドル以下で生活をしている貧困層に対して収益モデルが成立する価格と品質を探る商品開発のヒントになるのではないかとセカンドブランド以外での付加価値が存在しているのではないかと個人的には思っており、どのように育ててゆくかで、今後明暗を分けてゆく事業なのではないかと思っている。

本著を推薦した社長の意図は何か。日々感じる思いを最もよく反映させた内容がぎっしり詰まっていたからではないだろうか。本来なら全社員に対して面と向かって、何時間も物申したいことを、本著に代弁させた。そのように感じながら読了した。