2007/08/19

常識を疑え

常識を疑うことは、非常に難しいことである。
当たり前に行っていること、空気のように違和感なく漂っているかのように我々の周囲に存在しているもの。
今日はそんなことを中心に考えながら、あれこれと思考してみた。

私は先々週に長期休暇を頂いた。
サービス業、特に店長という立場で、お休みを頂けるのは非常にありがたいことであるが、
この時期、社内メールで飛び交う内容に非常に違和感を感じていた。
それは「引継ぎ」である。
引継ぎとは、つまり仕事と仕事をつなげること。
この場合は店長が長期休暇を取っている間、店舗運営が安定して行えるように適切なガイドラインを残すことに当たるのだと思うが、この「引継ぎ」がどうしても日々腑に落ちないまま、休暇も明けて仕事に復帰した後も未だに頭を悩ましている。
どういうことか。
皆が当然のように引き継ぐのである。上司も部下も近隣の店舗の店長も全員が、である。
これが危ない常識だと私は感じている。
そもそもなんで「引継ぎ」なるものが発生するか、それは本来、円滑に業務をこなしていくために必要不可欠なものであり、計画であり、判断基準であり、評価軸でもある。
換言すると、このような計画で、1週間業務を組み立てて、このレベルで、このぐらいの成果が出せるようにやってね、不測の事態が発生したら、こうゆう基準でこのように対処して、それでも駄目なら、こうすればなんとかなる。なんてことである。
引継ぎをしっかりね!引継ぎは万全です!というありふれた会話の中に常識によって思考が停止してしまった我々マネージャーの鈍感というか、気づき力の弱さを感じてしまった。
えっ何が?
そもそも引継ぎが発生している状況をよく考えてみよう。
毎週一体何をやってるんだ?だって店長がいても、いなくてもやることは基本的に一緒で、店長が休暇だと特別なイベントが発生するのか?それはない。
月曜日から日曜日まで何をやっているのかさっぱりわからない人間が店長の補佐役として店舗運営をやっているなら、それは補佐役ではない。
補佐役になっていないなら、それは店長の責任で日々の指導不足か育成不足でしかない。
つまりそれは店長、あんたの責任なんだ。である。
店長がやるべきことは確認であって引継ぎではない。不測の事態が起こるのは店長がいても、いなくても変わらないことであって、普段から判断基準の軸を教えていればいいだけの話である。
もっと平たく言うと、君が店長ならどうやって問題を解決するのかを自問自答でき、その答えが店長とイコールになるように育成すればいいだけである。
引継ぎとはそもそも摩擦であり、時間のギャップである。
流れが中断し、時間を取られ、集中力を欠く。
引継ぎがなければスムースに流れるように業務は流れ、集中してマネジメントを行える。
お伺いなど立てなくてもいい、自分で判断すればそれが正なのだから。
私が感じる、この「引継ぎ」への違和感はこうした考えが背景にある。
だから引継ぎなんてものは存在させないことが望ましい。
それが店長の補佐役が将来、店長になっても困らないための私の育成方針である。
自立させなければお互いが不幸になるだけである。

この「引継ぎ」は何も長期休暇取得の場合に発生するものではない。
日々の業務の引継ぎを考えると私の店舗の場合は

平均しておおよそ、
14名×1日3回×0.17時間+管理者合計1日当たり3時間×365日×平均時給1000円としても
370万円程度、年間費やしている。
チェーンストアならこれに店舗数を掛け合わせるといいです。
これぐらいはこの引継ぎという常識の影で垂れ流しになっている経費と生産性。

これをなくしてしまう方法が、この常識を覆す方法となる。
極限まで、この摩擦をなくしてスムースにとめどなく流れるように円滑にこなすことがイメージである。
例えば、情報や計画のプラットホームを作り出し、リアルタイムで状況が確認できる状態。
皆さんはマクドナルドに行ったことがあると思います。
良く見て見ると彼らは同じモニタを見ながら必要なものをテキパキと揃えてオーダーされたものを即座に提供できるように工夫しています。(観察する限りは)
それをマネすればいいだけです。
全員で1つのモニタに進捗状況を明記してリアルタイムで進捗を取り、消しこみをしていく。
それを全員が確認できるところに設置し、ひとめで何が終わっていて何が残っているのか、次の計画はなんなのか、それを1日単位、週単位、月単位で組み立てれば、プラットホームは完成します。
ではスタッフの業務のバトンタッチまでできるか。
それは携帯端末で作業状況をインプットしたり、質問も音声やメールでも対応可能なインカムのようなものとか、GPS搭載なら人員配置も一目瞭然で、的確に指示を出したり、スタッフ自身の移動距離や生産性などの情報も取り込めるようなものができたら、将来的には引継ぎの摩擦を0に近づけ、的確な作業量を見積もって割り当て可能になる。
だがしかし、
未来を待たずとも我々は今持っている知識や材料で同等に近いことはやってのけられるはずである。
それをやらない限り、常識の呪縛から開放されることはありえない。

是非、常識を疑って欲しい。

ちなみに私の店長補佐役のレベルの判断基準は日々の業務遂行状況と電話の回数と内容である。
多ければ多いほど、内容が緊急度と重要度が低いければ低いほど
私の力不足を痛感する。

店長全ては、あんたの責任だが聞こえてきてしまう。
店長全ては、あんたの責任だは自分に対する痛烈なメッセージである。
皆さんも自分を計るバロメーターとして意識してみてください。