最近流行のM&Aについて、ちょっと勉強してみました。
本屋に並んでいたのは知っていたのですが、買おうとはしていませんでした。
表紙はなんとも不思議な魔法の鏡テイストで綺麗な本ですが、中身は私のような初心者には、読みやすく砕いた内容になっているので、比較的読みやすかったです。
店長職には関係なさそうですが、いつなんどき我々の会社がターゲットになるかわかりませんし、我々の会社が買収を仕掛けることすら当たり前に起こる時代なので、必要かと思っていたので、重い腰を上げたしだいです。
マージャー(合併)のM&(と)アクウィジションのA(買収)
全体像としては、
●M&Aには表現は異なっても買収する側とされる側がはっきりと分かれるという点
また日本はパーチェス法という世界基準である会計法を取り入れたルールに則って開国しないと、
つまり日本の常識、世界の非常識により、業界再編が遅れを取り世界から孤立していくということ。
●M&Aの方法論とは
-TOB(株式公開買い付け)
現金買収方式はキャッシュ・イズ・キングと呼ばれるぐらい流動性抜群、リスク0の為、
条件では自社株を対価とするより優位。
現金はエクイティファイナンス(新株発行)などで調達したりする。
-ストックスワップ(株式交換)比率の提示⇒世界ルールは非課税対象、調整難易度高
なぜか日本では課税対象になっており、活発化しない原因である。
タックスドリブンと呼ばれるぐらい企業買収は税制主導である。
-プレミアムの提示(買収される側に説得力ある金額か価値を与える)世界的な水準は30%
現金なら時価総額に対して、ストックスワップなら株式交換比率で条件が明示される。
なぜか日本では、このプレミアムをクリアにしない企業が多い。
これぞ日本の常識、世界の非常識。
-納得感のある条件を取締役会が飲まない場合、直接株主に訴えかける。
プロクシーファイト(委任状争奪戦)がある。
●M&A、買収される側でのCG(コーポレートガバナンス:企業統治)の在り方。
-買収する側の企業が買収される側の企業に対して、プレミアムの提示をされたときに、
買収される側の取締役会が買収される側の株主にとって一番正しいジャッジを
しなければならないということ。
-買収される側の取締役会が自分の席を守るために納得感のあるプレミアムが提示されている
TOBを蹴るということは、ある意味、全くと言っていいほど株主を無視した行為となる。
-買収される側、特に敵対的TOBの場合は、社外取締役会の役割が重要である。
この場合、買収される側の取締役は退陣される可能性が高いため、保身になりがちである。
株主にとってのメリットを最優先に考えれれるのが、独立性のある社外取締役であるということ。
ここでCGと社外取締役について、非常に興味深い話が引用されていた。
米投資会社のバークシャー・ハザウェイの会長である。
ウォーレン・バフェットである。
あのマイクロソフトのビルゲイツのお友達の彼がこんなところで登場するとは思いもよらなかった。
バフェットは自己資産の99%をバークシャー株で持ち、ほかの取締役も同様に自己資産の大半をバークシャー株で持っているということ。
つまりである。
彼は常にバークシャーの株主とともにあり、株主の不利益になることは決して選択しない。
不利益が生じれば=自分にとっても不利益であるという仕組みを自らにビルトインしたのである。
どんな状況下でも、正しい判断ができるようにする、バフェットの哲学は素晴らしい。
-M&Aで買収される側の取締役会が正しい判断ができるかどうかは、この社外取締役の独立性と
能力と意欲が必要である。
能力は鍛えられたものでなくてはならないし、
意欲という点ではウォーレン・バフェットのようにあるべきであるということ。
このように全体観がうまく表現されており、非常に面白い1冊となりました。
この本の中で取り上げられていた楽天の三木谷社長とTBSの買収劇について1石投じようと思う。
著者は楽天がTBSへ仕掛けた買収劇に対して、旧世代の経営者であるかのような印象を抱かせたと書いているが、その理由はプレミアムの未提示などにある。
しかし、興銀のM&A担当であった三木谷社長が、そんなお粗末であるわけもなく、私は、不思議の国、日本の慣行を逆手に取って仕掛けただけのことだと感じてします。
世界の常識、日本の非常識を常識として買収を持ちかけただけ、通ればラッキーぐらいだったのかもしれない。
TBSに対して妥当性のあるプレミアムを明確に提示するということは事実上、極端なダイリューションにより、三木谷一族と楽天株主の議決権が薄まってしまうので現実的にプレミアムの提示はできないことぐらい三木谷社長は知っているはずで、そこがスペシャリストにとっては子供騙しに映ったのかもしれないが、この本の意味するところをよく理解した三木谷社長の試みであったのではないでしょうか。
私には、摩訶不思議M&Aの国の日本の常識を探ってみた楽天社長はもっと巧みだったように感じてしまいます。
明日からは、自分の会社とそれを取り巻く環境をこんな視点で眺めてみようと思います。
また
ウォーレン・バフェットが選んだビルゲイツという男は、どんな男なんでしょうか。
改めて、この二人に興味が湧いてきた次第であります。