前回は、オスロまでの話であったと思います。冬期の北欧はユースホステルが閉鎖されているため、一部の割高なホテルしかないので滞在する方は十分注意が必要ですという教訓。そこから毎晩のように夜行を駆使した泊まらない旅を繰り返した中で、面白い方と出会った。「オーロラ」というとアラスカのイメージが強いが実はスカンジナビア半島をどんどん北上すると、そこでもオーロラを見ることができるそうだ。そして列車で出会った老人は、このオーロラ観測を仕事にしている方で、その晩は短い時間であったが色々な話が聴けた。オーロラの観測所へ遊びにおいでと博士からお誘い頂いたが、いかんせん遥か北で南下しないと生死に関わるので後戻りできないなと後ろ髪ひかれながら、旅を進めました。その晩、窓から見える雪原が今でも脳裏にやきついています。オーロラ博士、いつか参りますよ。この後スウェーデンからデンマークへ南下することで初めて宿で寝泊りすることができた。今の社会ではネットカフェ難民から路上生活者へと転落する若者が話題になっていますが、暖かい寝床、雨風をしのげる屋根、食事、衣料など当たり前のものが揃っていて私達は満足に考えたり、志を持ったりできるものなんです。だから簡単に路上生活者にやる気がないとか、堕落している人間だとか言うことはできないと思います。真冬に野宿した経験のある方がどれだけいるでしょうか。現実、路上生活という環境は、人間の希望や志を根こそぎ奪ってしまう、そのような背景もよく考える必要があると思います。デンマークに入る列車の中でITの若者、おばあちゃん、おっかさんと向かい合いの席だったのですが、腹ペコだった私におばあちゃんが差し出してくれたリンゴや飲み物と、暖かい言葉は忘れられないな「遠い異国の地で私の孫が同じように苦しんでいたら、誰かに助けてもらいたい。だから私は貴方を助けてあげたいと思うんですよ。」なんて素晴らしい言葉でしょうか。今でもお年寄りを見ると何か自分にできることはないかと思うのは、その時示して頂いた生き方が強烈に心と体に染み込んでいるんだと思います。そしていつもその時のことを思い出します。