カテゴリーキラーの台頭でGMSや百貨店は失われた15年を悶々と送ったことは周知の事実である。
未だに買い物をしていると、感じることは「何でもあるけど買いたいものがない」この現実を端的に表現しているのがこの本の印象でした。確かにないんです。たくさん商品は陳列されていて、それこそ何でもあるんだけど魅力的な買いたくなるようなもの、買いたいものが見つからない。当事者はこの事実に気づいているのであろうか。少なくとも自分で買い物したときに顧客の側に立って客観視できているのだろうか疑問である。オールドビジネスは未だにオールドビジネスのまま膨張を続けている。
では肝心のカテゴリーキラーはどうかというと、これもまた安泰とは全く言えないのが現実である。消費者は何でもあるわけではないが、スペシャリティの中で欲しい何かが見つかったのはプロダクトアウトが全盛期であった時代のお話である。今や複雑に変貌を遂げたマーケットと戦わなくてはならない時代になった。
アパレルについては、空洞になっているラグジュアリーとユニクロやしまむらに代表されるSPAとの中間、買ったら大満足だが、高額である領域と買うこと自体にはさほど喜びや満足を感じることが難しい良品好価格との間を埋めに行くことが成功の秘訣と書かれている。
果たして本当にそうなのか、短サイクル小ロットの高速回転でSPAが舵を切れば、大量生産大量販売の最大の弱点である商品のコモディティ化を回避できる。
H&M、ZARAなどは商品政策をいくつかの軸でコントロールすることで世界人々の支持を獲得してきた。つまり最速でトレンドを取り込み生産から販売までの時間を圧縮する軸と定番商品で安定した需要を見込める商品を長い生産ラインで確保し経費をコントロールしていく、また販売する地域特性や売れ状況をリアルタイムに把握し物流を末端で最適にコントロールしていくという高度な仕組みである。
各企業ともに現代のマーケットで顧客心理をつかんで商売をしていくということは非常に困難を極める状況である。そこで私が考える次世代のアパレル業界で革命を起こすような革新的なマーケティング手法とは何かを書き出してみようと思う。
良い物を作れば売れる、それは正しい。売れているものや関心の高いものを作れば売れる、これも正しい、人々が気づいていない見えていない需要を掘り起こして商品にする、これも正しいに決まっている。誰もがそう思う。どんなにマーケティングを学び、どんなに豊富な知識や感性を持っていたとしても永続的に成功を手に入れ続ける方法論なんて皆無に等しいかもしれないが、可能性は0ではないと考える。
それは無料で使える「アパレル検索エンジン」である。
私が考えるアパレル検索エンジンとは何か、それは世界のありとあらゆる洋服の情報を取り込んで構築されたシステムである。
文字通り、ラグジュアリーからユニクロまで兎に角全ての洋服の情報を吸収して整理する。これをどうやって活用するのかは簡単である。
①単品の検索
②コーディネイトの検索
③オンラインショッピング
④モデル選択
⑤その他(デザイン)
①は言わずと知れた単品の検索、欲しいと思った単品のキーワードを打ち込むとそれに該当する商品がアップされる(グーグルの検索エンジンと発想は同じ)
例えばワンピースと入れてスペースを空けてカラーでもいいし、値段でもいい。
②がミソなのだが、トップスとボトムスのように画面が上中下で流れるようにしておきアイテムをスピンさせて変更できるようにする。コンセプトをキーワードで入力してもいいし、TPOでもOK。それに見合った組み合わせで自分好みのトータルコーディネイトを見つけられるようにスピンさせて組み合わせを楽しむこともできる。
③即オンラインで買うこともできるし、扱い店舗もわかるようにする。
トップスはバーバリーでスカートはユニクロ、ベルトはハニーズでトータル10万円なんて表示になっていて一括注文も可能にする。
④更にポイントなのだが、これは洋服だけを表示するのではなく着ている状態を見れるように作る為、モデルを選択することができる。このモデルを東洋人にしたり、西洋人にしたり好きに変更できるので、世界中の人々に対応することができる。しかもこのモデルは公募すればいい、世界に露出するわけだからトップモデルでも相当な宣伝効果を得ることができる。
ちなみに国内の販売数が好調なCANCAMなどのファッション雑誌はこの②と④でお役御免と成り得ることも考えられる。無料検索エンジンでトータルコーディネイトを好きなだけ好きなモデルを使って着せ替えられるのだから。
またカラーコーディネイターやスタイリストなどの職業も危機に瀕する。専門家がいなくても専門的なアドバイスをアパレル検索エンジンがやってのけるので無料で適切な着こなしができてしまう。
そしてファッション評論家はもはや必要ない。
⑤については、①~④は世に出た商品の話であるが、⑤は世界の人々が考える洋服、欲しいと思う服をデザインすると言うもの。人気がある、指示の集まる商品は商品化して世に出していく。これによって無名のデザインナーも埋もれた才能も日の当たる場所へ出ることができる。デザイナー達はフラット化したプラットホームで戦うことになる。評価するのはプロではなく、世界の民である。
但し、これを実現するには、少なくともインターネットが今以上に普及すること。テクノロジーも必要だし巨大なプラットフォームを築ける企業も必要、そしてアパレル企業の参画。
ひとつアイデアとしてはオープン型のシステム構築、ウィキペディアのようにアパレルの知識をWEB2.0の力を使って更新させていくことや企業以外の個人の洋服でもアップできるような操作性など課題はうなるほどあると思う。
無料でこんなシステム作ってなんのメリットがあるのか?それは究極のマーケティングがこのシステムの最大のメリットだからである。
日々検索されるアイテムやカラー、これを的確に把握するための極めて重要な情報をこのシステムは貯蓄することになり、全世界の多様化するニーズを徹底的に追究する究極のシステムがこの「アパレル検索エンジン」の正体である。
そして顧客にとっては便利で使い勝手がいいこの検索エンジンはひとたび受け入れられると爆発的に普及していくのではないか。
これこそWIN-WINの関係を顧客との間で構築することができる私が考える究極のマーケティングである。googleさんに努力してもらって是非作って欲しいけど、そうしたらうちの会社は敗退するだろう。プラットホームを築いた企業が、これからのアパレル業界も牛耳ることになると思う。