人生で一番大変なことは生きることなのかもしれない。生きることから解放されたひとは楽園へ行くのだろうか、それともまた現世へ舞い戻るのだろうか。この本のあらすじは、いつかきっとめぐり逢える。この想いがつづく限り―。太古のモンゴル砂漠で暮らしていた男女が、他部族の襲撃により離れ離れになってしまった。伝説の赤い鹿の精霊に導かれた男は、最愛の妻を追う。そして18世紀の南太平洋の小島で、現代のアリゾナノ地底湖で…。一万年の時と空間を超え、愛を探しつづける壮大なファンタジー、あの「りんぐ」と「らせん」で有名な鈴木光司さんが第二回日本フアンタジーノベル大賞優秀賞受賞作である。男女間の愛もそうだが、家族愛もこうやって時空を越えて来るのかもしれない。先日、妻の祖父が意識不明の状態になり、脳内出血で容態が良くない状況である。長いこと大病を患って介護施設で生活していたのだが、妻と結婚する前、結婚の報告などや子供が生まれて抱っこしてもらおうと何度か足を運んでお話をした。とても明るくこだわりのある方で、僕はすぐにその人柄が好きになった。妻はおじいちゃん子、私はおばあちゃん子で、よくそんな話をしていたしなるべく機会を作っては顔を出すようにしていた。年明けにご挨拶できるかなと思っていたので、とても動揺してしまってうろたえるばかり、公休日に子供と妻を実家に送ってUターンしてくる車の中で、とても色々なことを考えた。人は生まれた瞬間から必ずいつかは全員、ここを去らなくてはいけないことぐらいよく知っているんだ。だけど言葉で言うほどそんなの噛み砕いて飲み込めるものじゃない。いつだっていて欲しいときに大切なひとはいなくなってしまう。残された人はさびしいではないか。もし貴方が先を急ぐというのなら、私は貴方にお願いしたいと思う。貴方の生まれ変わりを、この世に送り込んで欲しい。名前はもう決めています。貴方の名前の一文字をその子にあげてください。丁度11年前、その介護施設はお寿司屋さんで、私は両親と祖母とその1階におりました。それから6年後、そこは飲食店となり、私は現在の会社に準社員として入社をし、その3階で卒業生の送迎会をしておりました。皆で歌を歌い、涙しながら4年間その店舗で働き通したスタッフを送った思い出の場所、妻の祖父が横になっているのはその場所なのです。人間の縁とは、なんて複雑に絡み合っているものなのか。おじいちゃん、僕に貴方の本をゆずってください。いつか貴方の生まれ変わりのその子に、僕はその本の全てを教えてあげようと思います。
2007/12/22
生きることとは
ラベル: 人生