2009/05/21

The endowment effect, loss aversion, and status quo bias


大前研一さんが米国が仕掛けた「フェイント」という興味深い記事を書いていらっしゃる。大前研一さんは、行動経済学について、日頃からお話することがあるが、この記事は正に、米国が行動経済学を認識した上で意図的に取っている戦略と言える。行動経済学という領域の開拓を導き出した米国心理学者ダニエル・カーネマンは2002年に「プロスペクト理論」(Prospect theory)ノーベル経済学賞を受賞しているが、今回の米国が仕掛けた「フェイント」は遡る事、1980年代、つまり30年近く前には、既に存在、立証されており、その後研究されてきた領域である。いわいるThe endowment effect, loss aversion, and status quo bias、「保有効果」「損失回避」「現状維持バイアス」と呼ばれるもので、この行動経済学入門という本の第六章で説明されている。またこの本にはThe winner's curse「勝者の呪い」やゲーム理論に関する内容も盛り込まれており、このような知識がある人間と、ない人間とでは明らかに生き方が変わる。Gameに強いのにはワケ(理由)があるわけだ。米国政府は世渡り上手と言える。

(簡単な例)
問1:世界で強毒性の鳥インフルエンザが大流行し、
600 万人が死亡すると予想される。国が国民に提示した対策は2 つあり、
それぞれの対策の結果は、以下のように予測されている。

対策A、200 万人が助かる。
対策B、1/3 の確率で600 万人全員が助かり、2/3 の確率で誰も助からない。

2つの対策のうちどちらを支持するか。

問2:世界で強毒性の鳥インフルエンザが大流行し、
600 万人が死亡すると予想される。国が国民に提示した対策は2 つあり、
それぞれの対策の結果は、以下のように予測されている。

対策C、400 万人が死ぬ。
対策D、1/3 の確率で誰も死なずにすみ、2/3 の確率で600 万人全員が死ぬ。

2つの対策のうちどちらを支持するか。

問1 では、およそ72%の人間がA を選び、28%がB を選んだ。
問2 では、およそ22%の人間がC を選び、78%がD を選んだ。

実際、対策A及びC、とB及びD は、表現こそ違うが結果は同じである。つまり、「助かる」という利得に表現がフォーカスされているのか、「死ぬ」という損失に表現がフォーカスされているのかという違いに過ぎない、しかし人間はそれぞれ違った回答をしている。今回の米国の「フェイント」は正に、この心理を利用しているということだ。